SBMA(球脊髄性筋萎縮症)による筋肉の劣化とは?
ご質問が多かったので、この場で簡単な回答を解説形式でします。
SBMA(球脊髄性筋萎縮症)は、比較的まれな遺伝性の神経筋疾患であり、主に男性に発症します。
この病気によって現れる「筋肉の劣化(萎縮)」は、加齢による一般的な筋力低下とはまったく異なるプロセスをたどります。
本記事では、SBMAに特有の筋萎縮の仕組みとその特徴、そして老化との違いをわかりやすく解説します。

低下するのは運動神経
🔬 1. SBMAにおける筋肉の劣化 ― 神経が原因の”神経原性萎縮”
SBMAでは、筋肉そのものが最初にダメージを受けるわけではありません。
筋肉を動かす運動神経が先に障害を受けるため、それによって筋肉が徐々に使えなくなり、小さく萎縮していく「神経原性筋萎縮」が起こります。
✔ つまり:
- 神経(脊髄から筋肉への指令)が壊れる
- 筋肉が指令を受けられず、使われなくなる
- 結果として、筋肉がやせ細り力が入らなくなる
特に、舌、喉、手足の末端の筋肉から先に症状が出やすいのが特徴です。
⚙️ 2. 原因となるメカニズム:アンドロゲン受容体の異常
SBMAは、**アンドロゲン受容体遺伝子の異常(CAGリピートの増加)**によって起こります。
この異常な遺伝子が、特に男性ホルモン(テストステロン)の影響を受けて毒性を発揮し、脊髄の運動神経細胞を変性・死滅させるのです。
🧬 流れを簡単に説明すると:
- アンドロゲン受容体の異常 → 異常タンパク質の蓄積
- 男性ホルモンの作用で活性化され、毒性を発揮
- 脊髄の運動ニューロンが死滅
- 筋肉が動かせなくなり、萎縮が進行
このようにして、筋肉のサイズや機能は保たれず、運動や発声、飲み込みなどの日常動作に支障が生まれます。
👴 3. 一般的な老化(サルコペニア)との違い
SBMAによる筋萎縮と、年齢に伴う自然な筋力低下(サルコペニア)には、明確な違いがあります。
| 比較項目 | SBMAの筋萎縮 | 老化による筋萎縮 |
|---|---|---|
| 原因 | 遺伝子異常による神経の障害 | 加齢による筋細胞の自然減少 |
| 発症部位 | 舌、喉、手足の細い筋肉など | 大腿部、肩など大きな筋肉群 |
| 進行 | 運動神経の障害により進行 | 運動・食事により回復可能 |
| 回復性 | 神経の再生が困難で進行性 | 運動や栄養で回復が見込める |
SBMAでは、筋肉が「使えなくなる」状態に近く、単に筋力が落ちる老化とは根本的に違います。
🔍 4. SBMAの筋肉の見た目と機能の特徴
SBMAの筋肉は次のような変化を示します:
- 細くなる(筋委縮)
- 力が入らない(筋力低下)
- 筋肉のピクつき(線維束性収縮)やけいれん
- 舌や喉の筋力低下による発声・飲み込み障害
これらは見た目にも分かる変化で、特に進行していくと、食事、会話、歩行、姿勢維持などの生活に支障が出てきます。
🛠 5. 筋肉が「特殊なもの」に変わるのではなく、”使えなくなる”だけ
誤解されがちですが、SBMAによって筋肉が”特殊な筋肉”に変質するわけではありません。
✔ 筋肉の本質的な性質はそのまま
- 筋肉は構造的には健康な人と同じ
- ただし、神経からの指令が届かないことで「使われない筋肉」になる
その結果、細くなり、やせて、動かなくなるという状態に陥るのです。
✅ 6. SBMAにおける筋肉劣化への対応方法
筋肉を守るには、筋トレよりも神経の刺激を保ち、過負荷を避けることが重要です。
❌ やってはいけないこと:
- 高負荷の筋トレ(筋損傷や疲労悪化のリスク)
- テストステロンの増加(病状の悪化リスク)
⭕ 推奨されること:
- 軽い運動(バランス・体幹維持)
- 舌・喉のリハビリ(発声、飲み込み訓練)
- ストレッチ、呼吸法、口腔体操
- 転倒や誤嚥のリスク管理(環境整備・補助具)
特に過負荷を避け、神経刺激を少しでも保ち続けることが、進行を穏やかに保つカギです。
🧭 まとめ:SBMAの筋肉の劣化は”神経から”始まる
| 観点 | 内容 |
| 原因 | アンドロゲン受容体の異常と神経の変性 |
| 筋肉の状態 | 指令が届かず、細く弱くなる「神経原性萎縮」 |
| 老化との違い | 単なる筋力低下ではなく神経からの障害 |
| 重要な対応 | 過度な運動を避け、軽い刺激で神経を活性化 |
SBMAは珍しい病気ですが、正しく理解し、無理のない範囲で身体機能を保つ工夫をすることで、QOL(生活の質)を守ることができます。本人だけでなく、家族や支援者にとってもこの理解は非常に大切です。
💬 この記事は、SBMAの本人・ご家族向けに執筆されたものです。
今後、実際に自分が取り入れてみた軽運動やリハビリの方法も紹介していきます。
よろしければ続編もご覧ください。

低下するのは運動神経


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